膝に水が溜まったら!

筆者は運動器リハビリを勉強中の整形外科医ですが、本日は本職に関連したお話をします。昨今プロのスポーツ選手が膝に水が溜まったと言う話を良く耳にします。例えば、ゴルフの片山慎吾プロ・野球の松井秀喜選手等です。昨日の新聞によりますと、松井選手は大リーグの最終戦を欠場して、ニューヨークに戻り、膝に溜まった水を穿刺して、腫れが引き、痛みも取れたとありました。針を刺した時はさぞ痛かったでしょう。頑健な彼のことですから、プレーオフシリーズで、ヤンキースの為に頑張ってくれことを期待しています。彼のコメントによれば、「チームが勝ってくれることを望んでいます。」自分が活躍して、チームの勝利に貢献するとの頼もしい言葉は聞かれませんでした。責任感の強い彼のことですから、自分は精一杯やるけれども、好調時のような活躍が出来るかどうかはわからないので、控えめの発言になったのだと思います。スポーツ選手の膝の痛みはいわば職業病で、長年の酷使によるオーバーユースで、半月板や関節軟骨が傷んで、場合によっては多少骨の変形まで起こしているかもしれません。高齢者の所謂変形性関節症と同じ状態になりつつあるのかもしれません。高齢者の場合、変形がひどくなると、人工関節に入替える事態となる事もあります。このような疾患で、水が溜まったり、骨の変形の為に痛みが来るような時には、整形外科医は、先ずセッティング(膝を伸ばして、力を入れて、膝蓋骨・お皿を引き締める運動)と言って、大腿四頭筋を鍛えて、膝の安定性をつけて対応する事を勧めます。セッティングは大腿四頭筋のみでなく、下肢全体の筋肉強化の効果があり、病気の為に弱った筋力を回復させる事で、かなり効果があります。ここで見逃しては成らないのは、このセッティングと言う運動療法には、もう一つの重要な効果があるのです。マッスルパンピングと言って、筋肉の収縮弛緩に伴う筋肉のポンプ作用です。これは、筋肉の収縮弛緩が、硬くなったり、柔らかくなったりする事で、うっ血した静脈血やリンパ液が、心臓へ送り返される働きを持っているのです。この効果については、まだ残念ながら、まだ一般の整形外科医でも認識が甘いようです。足やふくらはぎが、第二の心臓と言われるように極めて有用な働きがあるのです。膝の場合には、膝関節腔と言う水が溜まる袋があるわけですが、これをも周囲から押さえつける事になり、多少の水は吸収されてしまうのです。この事の効験あらたかなのを知ったのは、身内に膝に水が、溜まった者がいて、最初は毎回15から20cc程度穿刺によって水を抜いていたのですが、埒が明かぬので、しばらくセッティングでもやっていなさい。と放置していたら、いつの間にか、すっかり水が貯まらなくなっていたのです。この時に初めて、マッスルパンピング効果が馬鹿にならぬことを知ったのです。朝晩それぞれ10回程度毎日この運動をすることで、一挙両得の効果が期待できる事を強調したいと思います。
このような悩みをお持ちの方、是非、お試しあれ!最後に一言。継続は力なりで、続けなければ、駄目ですぞ。